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あなたと越えたい‐1551‐

 今日の大阪は曇り空の寒い1日でした。

 しかし朝方は7時頃になればかなり明るくなり、季節が進んでいることも感じます。

 朝焼けは天気が崩れると言いますが、それでも美しいことに変わりはありません。

 冬季休暇の話しに戻りますが、1月4日から6日までは伊豆半島の伊東に滞在していました。

 特にこの期間が暖かかったようですが、15℃以上まで上がった日もあり、南国の雰囲気さえ感じます。

 ホテルの部屋から、遠く東に望むのは初島。

 蜃気楼が見えた日もありました。

 中心街には温泉町の風情が残ります。

 昭和3年に完成した東海館は、庶民のための温泉宿だったそう。

 これが庶民の温泉宿だとするなら、当時の建築がいかに丁寧に創られていたのかを感じるのです。

 少し車で走ると、長い竹に飾りつけをしたものを多く見かけました。

 先の写真にも写っていますが、新年を祝う地域の風習なのでしょうか。

 伊東から伊豆半島の内陸部を南に下ります。

 天城山を目指し九十九折の山道を走ると、名産のワサビ畑をところどころに見ることができます。

 天城山の雪解け水が、美味しいワサビを育てるのだそう。

 確かにあまり辛くなく、食べやすいワサビでした。

 今年も「紅白歌合戦」は観ていないのですが、紅組のトリは石川さゆりの「天城越え」だったとありました。

 川端康成の代表作「伊豆の踊子」の舞台でもある天城トンネル。

 まさにここが天城越えの地です。

 正確には天城山隧道といい、明治38年に完成した石積みのトンネルです。

 途中まで歩いてみましたが、ちょっと怖くなって戻ってきました。

 道中の山道には川端康成のレリーフがあります。

 「伊豆の踊子」は、青年が旅の一座にいた幼い踊子に寄せた淡い恋心を描いた小説です。

 「雪国」と共に川端康成の代表作。

 1968年、日本人初のノーベル文学賞を受賞しますが、ともにトンネルが大きな役割を持っているのが面白いところです。

 この珠玉の2作品を「トンネルズ」と言ってしまったら、巨匠にお叱りを受けるでしょうか。

 川端はノーベル賞の受賞にあたって「作家にとっては名誉などというものは、かえって重荷になり、邪魔にさえなって、萎縮してしまうんではないかと思っています」と語ったと言います。

 また、受賞の理由に「日本の伝統のおかげ」「各国の翻訳者のおかげ」、まな弟子である「三島由紀夫君のおかげ」と語ったそうです。

 その三島由紀夫の割腹自殺の2年後、1972年72歳の時に自らも命を絶ってしまうのです。

 市井で暮らす私に、文豪の心の底など分からないとも言えますが、僅かに作家としての苦しみも分かる気もします。

 改めて「天城越え」の歌詞をみてみます。

 誰かに盗られる くらいなら あなたを殺して いいですか

(中略)

 あなたと越えたい 天城越え

 敦賀から京都に鯖を運んだというのが鯖街道ですが、これらは女性の仕事だったそうです。

 その道中、山賊の類に多くの女性が命を奪われたと言います。

 天城山隧道の歴史背景は知らないのですが、多かれ少なかれ、そのようなサイドストーリーはあるのだと思います。

 日本列島で旅をするということは、山、峠という障壁を越えるということです。

 トンネルは非常に重要なものであり、これ程交通が発達した現在より、もっとドラマチックな景色を演出するものだったでしょう。

 車、新幹線、飛行機と便利な世の中になりました。

 しかし、未だに「天城越え」が紅白のトリを飾ることが理解できる気もするのです。

 ただ、殺されるのは御免ですが。

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