チャーミング‐1431‐

ここのところ、週の半分は現場を回っている感じです。

竣工間際の現場が3つと、着工したばかりの保育園があり、3、4ヶ所回るならやはり車が便利。

秋から冬にかけては、景色が変化するときでもあり、移動時の楽しみでもあります。

大阪、北摂、京都と回っていると、あっという間に夕暮れ。

本当に日が短くなりました。

家事動線がコンパクトな「白のコートハウス」は、外壁を左官で仕上げます。

最近の住宅は、サイディングというパネルがほとんどですが、継ぎ目のない大きな壁はやはり美しいもの。

現場前にあるのは、言ってみれば小さなプラントです。

ここから、2階、中庭へと、練りあがったモルタルがホースで供給されるのです。

それを職人がコテで塗り付けていくのですが、やはりこういった手仕事は見ていて楽しいもの。

また、好き嫌いだけでなく、工場生産のパネルには大きさの限界があります。

現場の手仕事だからこそ、継ぎ目の少ない大きな壁をつくることができるのです。

「ねるねる」は駄菓子の商標だったか。

親方がここで「ねるねる」する姿をチャーミングと言えば怒られるでしょうか。

しかし、こういったチャーミングな職人が減ったと思うのは私だけでしょうか。

もう少し具体的に言えば、50代中頃以上の人は「媚び」を持っている人が多い気がします。

「媚びる」と言えば、悪い印象が先に立ちますが、ある部分に媚びが含まれていないと、コミュニケーションは成り立ちません。

そこには、良く思われたい、良い関係を築きたいという気持ちが含まれているからです。

九鬼周造の書いた『「いき」の構造』は芸術論の名著といわれます。

日本独特の美意識を表す「いき」という言葉を紐解いていくのですが、こう定義されています。

 垢抜して(諦)、張のある(意気地)、色っぽさ(媚態)

さらに、その媚態をこう説明しています。

 媚態とは、一元的の自己が自己に対して異性を措定し、自己と異性との間に可能的関係を構成する二元的態度である。

簡単に言えば、男女関係においてもベタッと一緒になってしまうのではなく、相手があり、緊張感とある距離感を保っているから媚態があると。

男女関係だけでなく、仕事においても全く同じだと思います。

絶対服従する訳でなく、ただ反発する訳でなく、よい関係を築き、よい結果をだしたい。そこには、媚びや、サービス精神が含まれているはずです。

先日、独立した時から世話になっている建設会社の社長が挨拶にみえました。

今年で82歳になるといいます。

この年の先輩に、チャーミングと言えば失礼になるかもしれませんが、ぶつかり合いもしましたが、やはり魅力的な人だと思います。

チャーミングといって貰ったことはありませんが、「飲んだら笑顔がすてき」といってもらったことが1回だけあります。

飲んでなくても、すてきと言われる人間を目指して頑張るのみなのです。