今年の冬は暖かいと思っていたら、急に寒くなってきました。
それでも、関西のスキー場には厳しい状況が続きますが、標高のあるびわ湖バレイだけが健闘中のようです。
「滋賀の家」へ向かう東岸から、頂上付近、わずかに雪が見えていました。
先週の取材の際、撮り忘れていたアングルを何枚か撮りました。主には吹抜けに面したセカンドリビングからのカットです。
吹抜けのハイサイドから、丁度、土塁上のヒノキが目に入ります。ここからの景色がとても良いと、クライアント、監督から感想を貰っていました。
敷地が大きいので、建物の奥行きが薄く、どこからでも自然が目に入ってくるのです。
建築の役割は、人間に自然のよい影響を全て与える装置として働くことであり、またそれは、人間を自然と建物が作り出す環境に現れる全ての悪い影響から保護することである。
1898年、フィランド生まれの建築家、 アルヴァー・アアルトの言葉です。
1953年に完成した「夏の家」は彼の別荘。
実験住宅「コエタロ」とも呼ばれるように、色々な実験がなされた面白い住宅です。
今も好きですが、若い頃は、今以上に影響を受けていました。
1998年に完成した私とっての3作目。「Spoon Cafe」は、アアルトの空間を意識してデザインしました。
特別な仕掛けがある訳ではないが、来訪者が主役だという気持ちは、強くもっていました。
アアルトのエッセイ集はなかなか面白いのです。
『不動産投資家』は建築の敵No.1だと言います。更に、手ごわい敵は、『建築経済性の理論』であり、普通「どんな形の家が最も経済的か?」と語れていると言っています。
もし5階あるいは8階建の家を建てたとすると、その質問は「建物の奥行はどのくらい?長さは?持家を持ちたいと望んでいる人々に一番安く建ててやる方法は何か?」というようなものだ。
もちろん、これを科学と呼ぶことができるかもしれない。しかしそうではないのだ。
答えは全く簡単だ。一番奥行の深い建物ほど安い。それは明らかなことだ。さらにいえば、非人間的な家ほど安い。
つまり、われわれのもっている一番高価な光は日光で、それを全部捨て去ればずっと安い家ができるというこいとである。
すべての中で一番高価ものは新鮮な空気である。なぜなら、それは空調だけでなく都市計画の問題だからである。人間のための新鮮な空気は何ヘクタールもの土地、良い庭、森や草原や道路に値する。
光と風=新鮮な空気と位置づけ、最重要視して設計をしてきましたが、新鮮な空気こそが最も価値があるとは、アアルトの視点は、かなり高いところにあります。
しかし、建築の敵とは思い切った表現ですが、これに賛同したことで、私に投資家かからの仕事はこないかもしれません。
真意が分かって貰えればそれで良いのですが「誰のため」「何のため」がぼやけてしまう原因に、経済性という言葉がちらつくケースは本当に多いと思います。
勿論、経済性を無視するという意味では全くないのですが。
真の建築は、その小さな人間が中心に立った所にだけ存在する。
何とも表現しにくいが、なぜか良い。私にとってアルヴァー・アアルトはそんな建築家ですし、目指すところでもあります。