浴槽の営業じゃけん‐1150‐

 彼岸まで1週間をきり、寒さの終わりが見えてきました。

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 水仙が満開です。

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 今日は朝から、大和重工業というバスタブメーカーの営業がありました。バスタブを積んで持って来てくれました。

 その重さ130kg。

 飛び込みの営業は断っており、自分が本当に聞きたいと思うモノ、人しか会わないことにしています。

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 このメーカーのバスタブは鋳物ホーロー製で、現在進行している計画にも、いくつか採用しています。

 鋳物ホーローとは鋳物でつくった型に、ガラスを焼き付けたもの。

 重厚感と、清潔感を備える素材で、モノのポテンシャルは非常に高いと言えます。

 広島出身の営業マンは、一人で車から降ろすと言います。繰り返しますが重さは130kg。

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 手伝わずに、見せてもらうことにしました。

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 実に器用に、バスタブを揺らしながら、動かしていきます。

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 無事地面に降ろし、その上でスタッフに説明を始めて貰いました。

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 バスタブの上で、YouTubeによる製造工程の解説付き。

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 それが終ると、また一人で車内に戻し、帰っていきました。その間、20分程。

 浴室としては、近年はユニットバスが採用されるケースが多くなりました。 メーカーとしては、高級ホテルなどが重要な納入先のはずです。

 それを、我々のような、建物を量産する訳ではないアトリエまで実物を持ってきて、営業をするのです。

 「当社は、毛利元就の居城近くにあった、たたら場が起源となっています。じゃけん……」

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 どこで読んだか忘れましたが、伝説の営業マンの話です。

 本当にモノを売りたいと思ったら、その会社の前で車を停め、自分でタイヤをパンクさせてでもコミュニケーションをとる。

 考えてみれば、バスタブを地面に降ろさなくても、商品説明は出来るのです。

 モノの見極めは、厳しくしています。その上で、多くの競争相手から選ばれるには、何か一押しが必要です。

 自社の製品に対する愛着、歴史、人はその後押しになりえるのです。

 水仙の学名はナルシサス。

 ナルキッソスは、水面に映る自分の姿に恋焦がれた美少年。このギリシャ神話に基づき、自己愛をナルシシズムと言います。

 自分の見え方ばかり気にしている営業マンをみると、何を伝えたいの、と聞きたくなります。

 実にアナログで、気持ちのよい、営業でした。もっと言えば「こやつ、モノの売り方を知っているな」でしょうか。