ブランドの魅魔力 ‐1002‐

 ブランド(brand)の語源は「焼印からきている」と、「試験によくでる英単語」にあったはずです。

 諸説あるようですが、やはり牛に焼印を押す(Burned)から派生したというのが、有力のよう。

 銀座でのプロジェクトは、かなり高額なものを売る店舗のデザインです。

 それで、いわゆる高級ブランド店を見て回る事になりました。

 リニューアルしたばかりの銀座松屋のルイ・ヴィトン。外装のデザインは青木淳、内装はピーター・マリノ。

 中央通りを隔て、向いにあるのがカルティエとシャネル。

 カルティエは外観がシルヴァン・デュビュイッソン、内装が ブルーノ・モワナー。

 シャネルは再びピーター・マリノの設計でした。
 

 晴海通りのディオールは外装が乾久美子で、内装はまたまたピーター・マリノ。ピーター・マリノの独壇場です。

 空間興味で入る事はあっても、あまりこのような店には入りません。どちらかと言えば、建築家・石井和紘が言った「モノを持たずに空間を持て」という言葉に惹かれるからです。

 しかし、じっくり見るからには、それでは辻褄が合いません。

 で、「結婚10年目のプレゼントを探す」という、仮のテーマを設定しました。すると会話も至ってスムーズ。

 銀座界隈のショップを6件回ったのですが、4時間掛かりました。
 

 中でも、応対が丁寧だったのがブルガリ。

 ルイ・ヴィトンの北隣にあり、店舗デザインは本国からの指示通りとのこと。しかし、出てきた飲み物にもストーリーがあり、ブランドの生い立ち、強味、ポリシー等、熱心に語ってくれます。

 夫妻で時計にされてはと、まず紳士物の時計を出してくれました。260万円を手首に巻いたとき、かなり心を揺さぶられるものもあり……

 まじまじとダイヤのネックレスを見ると、やはり非常に美しいものだな、とも。その晩は東京泊。安い夕食を食べながら「あのくらいのバックならありえるのかもな」と少し思う私。

 大阪に戻り、そんな話を妻にすると「本当に買ってくれてもいいよ」と。

 完全冷やかしでは店員さんも気合が入らないと思い、仮のテーマを設定しました。しかし、丁度この秋で10年目でした。

 その位かもな、とは思っていたのですが、あながち冷やかしでは無かったのかもしれません。

 美しさの本質を見抜く、審美眼を持っていたいと思います。しかしブランドは、ある一定ライン以上を担保するものでもあります。

 この歳にして、もしかするとブランドの魅魔力を知ったのか……