続・およそ一世紀 

 亡き祖父は、結構おしゃれな人でした。

 口髭はいつも手いれしており、出かけるときはスーツに広ツバ帽を被っていました。メガネをかけており、少し汚れが見えたので洗ってあげようと思い、手にとってみると、あまり度がきつくありません。「これで、良く見えるの?」と聞くと、あまり変わらないと。よくよく聞いてみると、ダテ眼鏡もかけていました。

 毎年、年始に岡山にある祖父宅を訪れると、食べきれない程のご馳走を用意して待ってくれていました。なかでも、食後にストーブで焼きながら食べる「へき餅」という手作りのお餅が美味しかったことを良く覚えています。

 ついた餅に卵、砂糖、練乳などを混ぜて、一旦乾燥させます。味付け海苔くらいの大きさを、厚さ5ミリくらいに切り、ストーブの上で、焼いて食べるのです。やや甘めなので、少しこげ色がつき、プーと膨らみだしたら食べ頃です。時間がたちすぎて乾燥しすぎたものは、油で揚げても食べていました。

 裏山にある果樹園をこよなく愛した祖父は、そこからの眺めが大好きでした。果樹園へ向かう山道の中程に、先祖代々のお墓があります。

 自らが愛した、山と小さな港町を眺めながら、ゆっくりと過ごすことでしょう。