北新地のはずれで

 大学時代の友人がバーを始めました。場所は北新地に隣接しているのですが、住所に北新地と付かないので、家賃がだいぶ違うようです。
 経営者で、マスターの彼はすこし風変わりな男です。
 同じ大学の理工学部建築学科に在籍していたのですが、建築関係の定職についたことは一度もなく、一定期間バーテンをしては辞めて海外に貧乏旅行への繰り返し。世界各地にある一泊数ドルのゲストハウスと言われる安宿を泊まり歩くのです。-そういう長期旅行者をリュックひとつ背負ってという意味でバックパッカーと言います-
 彼はあるときはタイに1年も行っていました。初めて行った海外旅行がインド。悪く言えば、チャランポラン、良く言えば自由人。但しどちらも徹底しています。
 たまに顔を出しては取りとめも無い話をしているのですが、私も貧乏旅行が大好きなので、話が尽きることはありません。
 35℃を超えるむせ返るような暑さと、ホコリっぽい風と、すえた匂いの漂う、東南アジアの街の話をしていると、なぜかソワソワした気持ちになります。日本より裕福では無い国の人々のギラギラした目を見ると、怖い気持ちもありますが、何より刺激になります。
 バックパッカーとなることは、大袈裟に言えばちょとした冒険です。初めて訪れた街は怖くもあり、ワクワクもします。むやみに危険な場所を求めている訳ではありませんが、少し怪しい
街の外れの屋台で、何が入っているか分らない料理で、冷えの悪いビールを飲んでいると
-小さなことで悩んでたなア、地球ってほんとにデッカイなア、ホントにいろんな言葉があるなア、街の空気が全く違うなア-といろんな事を感じ、想います。
 旅は自分との会話の繰り返し。
 昨晩も今すぐにでも旅に出たいという衝動に駆られていました。