カテゴリー別アーカイブ: 04 建築

一生に一度、大阪ガス『住まう』‐1539‐

 10月の中旬、取材に立ち会ったことを書きました。

 大阪ガスの機関紙『住まう』のものでしたが、「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載の67号が届きました。

 読み物としても面白いですし、大阪ガス関係の施設で無料で配布しているので、良ければ手に取ってみて下さい。

 会社にも何冊か残っているので、ご希望の方にはお送りします。

 今回は、巻頭特集の8ページ。

 表紙をめくると大きく写真が2枚。やはり一番前は嬉しいものです。

 『住まう』にはこれまでに「池を望む家」「イタウバハウス」が掲載されたと書きました。

 大阪ガスのwebサイトには、44号以降の作品が掲載されています。

 この号から誌面のスタイルが変わったそうで、その巻頭特集の第1号が「池を望む家」だったのです。

 2010年の秋のことでした。

 webサイトでは最下に『CASE 1』として紹介されています。

 ちなみに「イタウバハウス」『CASE 33』。こちらは見開き1ページの中ほどのコーナーでした。

 『住まう』のスタイルが変わったのは、製作会社が変わったからでした。

 その1回目ということで、担当者も気合が入っており、非常に熱心だったことを覚えています。

 テレビの取材でロケハンは普通ですが、雑誌取材でロケハンをしたのはこの時以外に経験がありません。

 この方はカメラマンだったと思います。熱心に内部を見て回っていました。

 実は「池を望む家」は、撮影の天気に恵まれず、外観だけは晴れの日に撮りなおしています。

 しかし、このロケハンの日は素晴らしい天気でした。

 写真を見ていると外部の景色がよく分かり、この家の空間がよく伝わってきます。

 それで、10年振りに当社のサイトも何枚か写真を差し替えてみました。

 現在なら、天気が少しでも悪ければ、クライアントにも写真家にも延期をお願いします。

 負担が大きいのは分かっていますが、これらの機会は私達にとってはおそらく一生に一度。

 当時撮って貰っていた写真家は、「天気が少々悪くても、いい建築はいいから」と言っていました。

 現在撮って貰っている写真家も「曇りや雨の方が映える建築もありますよね」と言います。

 いずれも真理ですが、私が絶対晴れでないと駄目だと思った建物は、譲らないことにしました。

 もし「このくらいの天気なら撮ってしまいましょうよ」と言われたら、写真家を替える覚悟で延期をお願いします。

 当社にオファーをしてくれるクライアントも、おそらく一生に一度だという気持ちの方が殆どのはず。

 それを一番理解していないのは、概ねプロ側です。

 写真家にとって撮影は日常です。建築家にとって建築設計もまた然りですから。

 「いつもクライアントの気持ちだけを考えています」と言いたいのですが、そんな甘っちょろい言葉の何百倍も、お客さんは求めているはずなのです。

 もし、他の人よりクライアントに寄り添える方法があるとしたら、どれだけ後悔したかや、苦い経験をしたことがあるかに尽きる気がします。

 「十分にやったんだ」と言い聞かせることもできますが、それでは駄目なのです。

 「中庭のある無垢な珪藻土の家」も2度延期し、3度目の撮影でした。

 クライアントは、「もう一度あの撮影を、という気持ちには……」と。今回の誌面もその時の写真です。

 本当に正直な、愛すべき方でしたが、やはり一生に一度だったのです。

 多くのことは一生に一度の経験です。

 利休の言う「一期一会」は決して特別な場面を指すのではない気がするのです。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記<&lt;/a&lta</

奈良監獄で自由と罰について考える‐1538‐

 金曜日は勤労感謝の日。

 11月も終盤に入りました。

 晩秋の夕暮れ。

 日本の里山には柿がよく似合います。

 「旧奈良監獄」が、23日から25日まで最後の一般公開をするという記事をみつけ、急いで申し込みました。

 設計者のお孫さん、ジャズピアニストの山下洋輔さんが、保存運動をしているという話しも記憶にありました。

 奈良監獄は、近代化を目指す明治政府がつくった五大監獄のひとつ。

 1908年の完成で、2021年にはホテル等の複合施設に生まれ変わります。

 1946年には「奈良少年刑務所」となり、昨年老朽化のため閉鎖されました。

 入場チケットに空きがあったのは、昨日16:00の最終回のみ。

 五大監獄で現存するのはここだけなので、最後の最後に滑りこみセーフという感じ。

 申し込んだ後、すぐに家族も誘ったのですが、その日の夜には全て売り切れていたのです。

 その理由が分かります。凄い人出でした。

 ロマネスク様式の表門を見返しても長蛇の列。

 中央看守所までそれが続いています。

 中央看守所から舎房が放射状に伸びる形態は「ハビランド・システムと呼ばれます。

 側面からみるとその配置が分かりやすいでしょうか。

 各舎房の交点、中央看守所からの景色は圧巻です。

 人も殺到する訳です。

 2階と1階の中央は光と空気が行き来します。

 ところどころにあるトップライトの光も、1階まで落ちてくるのです。

 内部空間も繊細につくられていました。

 しかしここは監獄。

 罪を犯した人たちが入るところです。

 勿論のこと自由はありません。

 2階からは南東に若草山を望む風光明美なところです。

 近隣との境にある塀は、6m位あったでしょうか。

 煉瓦積みの極めて美しい建物ですが、歩くと床がしなる感じもありました。

 安全のため、近隣のことを考えると閉鎖もやむなしでしょう。

 刑務所内に入ったのは初めてですが、敷地の広さ、開放感、快適性など、想像を遥かに上回るものでした。

 最近は、熱中症対策のエアコンがついているといいます。

 麦入りご飯などは昨今の健康ブームで言えば、むしろ望ましいもの。

 収監されることを「臭い飯を食う」と言いますが、おそらくほど遠いものでしょう。

 自由の有る無しという一点を除けば、非常に理想的な生活にも思えます。

 人は誰も間違いを起こす可能性を持っています。

 しかし、収監されるまでの罪を犯した人が、本当の意味で更生するのは、相当に大変だろうと思います。

 信用を築き上げるには膨大な時間が掛かります。しかし失うのは一瞬です。

 例えが微妙ですが、不良少年が気持ちを入れ替えて、普通の暮らしに戻ったとします。

 本人は「大変なことをやり遂げた」と思っていますが、普通に暮らしている人からすれば当たり前のこと。

 過去に悪さをしていたなら、そのマイナスも背負ってのスタート。ハンディはあると言わざるを得ません。

 このギャップを越え、周囲の人の気持ちを変えるのはかなりの苦難を伴うはずです。

 子を持つ親として、ここで少年少女が服役していたと考えると、晴れ晴れとした気分にはなれません。

 国として、それをサポートするのは凄いことだと思いますし、応援できることがあるとするなら、税金を納めることくらいでしょうか。

 今月末、予定納税の支払いがあります。

 納税の考え方は、現金主義でなく発生主義。入金が済んでいなくても納税の対象になります。

 それだけでも理屈に合わないと思うのに、予定で先に納税するなどというのは、もう懲罰に近い気さえするのです。

 そんなことは、微塵の問題もないくらいの盤石の経営をしなければなりません。

 普通に生きることは、おそらく刑務所に入るより何十倍も、何百倍も大変なことです。

 娑婆には自由があります。しかしその自由を満喫しようと思えば、びっくりするくらいの荒波の中を進んでいかなければならないのです。

 罰がどうとかいう世界から、早くこの自由社会の荒波に本気で立ち向かって欲しいと思います。

 自由とは、怠惰とか無責任とは程遠いものなのです。

 多くの人は頷いてくれると思うのですが。

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成功を恐れない‐1528‐

 日曜日に中2の長男が居るのは珍しいのですが、聞けば定期考査中とのこと。

 どうせ大して勉強しないので、昼食がてら河南町へドライブに出掛けました。

 街路樹の中には、色づき始めた樹々もちらほら。

 このあたりまで来ると、かなり緑が濃くなってきます。

 20年振りに、近つ飛鳥博物館にやってきました。

 河南町、太子町にまたがり、古墳時代・飛鳥時代を専門に扱った博物館です。

 1994年の完成で、設計は安藤忠雄。

 彼が乗りに乗っていた時代の作品と言ってよいでしょう。

 何と言っても特徴は、この連続する階段と極めてシンプルな搭状のキューブです。

 階段向かって右からアプローチするとエントランスが見えてきます。

 コンクリート打ち放しの柱と梁に、大きなガラス開口。

 多くの建築をみてきましたが、これほど作風を変えない建築家は稀だと思います。

 最も大きな展示空間には、仁徳天皇陵の模型がありました。

 その奥にある少し暗い空間は、あのキューブの真下にあたります。

 そこには巨大な修羅が展示されているのですが、この部分が「地震により立ち入り禁止」となっていました。

 見上げると内部は空洞。巨大な吹抜けなのです。

 普段は明るいのか、このままなのか分かりませんが、コンクリートの一部に剥がれでもあったのかもしれません。

 博物館、美術館へ行こうというと、子供達は「え~、また~」と嫌がるので、あくまで目的は昼食。

 来たら来たで、楽しんで帰るのですが、子供心は難しいものです。

 立ち入り禁止となっていたのはこのキューブの下。

 これだけ巨大な吹抜け空間が、必要なのかと聞かれれば、おそらく答えは無いと思います。

 しかし、ドラマティックなのは確かです。

 建築家・安藤忠雄は、70年代から現在に至るまでトップランナーであり続けています。

 77歳となった今でも、建築家と言えば安藤を上げる人は多いでしょう。

 建築家だけに関わらず、多くの成功者を見て思うのですが、「成功を恐れていない」と感じます。

 「失敗を恐れるな」とよく言いますが、本当に難しいのは前者のような気がします。

 失敗しないこと=成功、とはなりません。ここには大きな違いがあると思うのです。

 もっと言えば、「恐れ」という概念が無いのかもしれません。

 コンクリート打ち放しは安藤建築の代名詞です。その手法を学ばせて貰い、表現として使わせて貰いました。

 しかし、真似レベルでは終わっていないつもりです。

 日本のコンクリート打ち放しの文化は、私が守りますので、安心して最後まで走り切って下さい。

 同業なので、「凄い」とばかりは言っていられません。絶対超えて見せると決意するしかないのです。

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いえをつくるのじょうずだね‐1527‐

 先週日曜日は、「中庭のある無垢な珪藻土の家」の取材でした。

 ある機関紙の巻頭8ページの予定です。

 以前には「池を望む家」「イタウバハウス」を取材して貰いました。

 なかなか葉がつかなかったヤマボウシも、元気を取り戻しています。

 木々の変化は、折々の表情を家に与えてくれるのです。

 制作会社の担当者2人と伺い、2時間程の取材でした。

 「取材時は是非サポート下さい」と言っていたご夫妻でしたが、全くの杞憂でした。

 インタビューが始まると、家づくりの物語りが次から次へとでてきます。

 おそらくそうなるだろうと私は想像していました。

 打合せの際も、疑問、質問などがいつも非常に分かりやすく、明快でした。

 ご夫妻と話しをしていて、話が途切れることはまずないし、ご主人と四方山話しをしていたら2時間くらいはあっという間なのです。

 写真は以前のものを使うことにしました。

 実際の暮らしが始まったあとに撮影するのは、本当に大変です。

 この春に撮影したカットですが、お姉ちゃんはお絵かき、弟くんはパワーショベルで遊んでいる間に撮ってもらいました。

 こういったカットを写真家は「奇跡の一枚」と言います。

 大げさに聞こえるかもしれませんが、全てがかみ合うカットは、なかなか撮れないものなのです。

 5歳になったお姉ちゃんは、担当者と私を色々と案内してくれます。

 将来の子供部屋にはダンボールの家が。

 中には新聞紙で作った箒と塵取りまでありました。

 ものづくりがとても好きなのはお母さん譲りでしょう。

 インタビューは土地購入の経緯から始まり、おのずとキッチン周りのこだわりの部分へ移っていきます。

 ゴミ箱上にある、ゴミ袋のストック置場。

 何でもないものに見えるかもしれませんが、通路側を向いているので来訪者からは見えません。

 また、ゴミ箱の蓋の軌道をかわした位置にあるのです。

 キッチンからつながる、2.5畳の和室は様々な機能を併せ持ちます。

 洗濯物を畳む、雨の日の物干し、お子さんの昼寝等など。機能面での見せ場です。

 更に、その和室と洗面脱衣が繋がるのがこの収納。

 和室で畳んだものが、洗面脱衣室側からとることができるのです。

 インタビューの冒頭に、お姉ちゃんがこんな可愛いものを私に手渡してくれました。

 シールをはがすと私への手紙がでてきました。

 まだ逆さ文字が混じっていますが、本人が読んでくれました。

 「もりたにさん いえ つくるの じょうずだね」

 前の晩に、自ら書いてくれたとのことです。

 建築をつくるのが仕事ですが、「じょうずだね」と言って貰ったのは初めてです。

 多くの創り手がいる中で、もし誇れることがあるとしたら「一緒に物語をつくる」ということに尽きる気がします。

 取材に行く前に、8年前の「池を望む家」の巻頭特集に少し目を通しました。

 こちらの計画も、池の横にある土地と出会うところから、家づくりの物語が動き出します。

 その物語の舞台監督を私に任して貰えるなら、ドラマティックにダイナミックに、そして必ず楽しいものにしてみせます。

 それが私の生きる道なのです。

 この機関紙は無料で貰えるので、発刊の日時が決まればまたお知らせしたいと思います。

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台風から瓦を守るのは誰‐1522‐

 台風21号の爪あとがいまだに残るなか、昨晩の24号は和歌山に上陸しました。

 関西、東海、関東を縦断しましたが、今回は関東での影響が大きかったようです。

 今日の大阪は台風一過の晴れ空。

 生駒山がくっきりみえていました。

 唐突ですが、日曜日の産経新聞に、私の名前がでていたと、何人かの方から連絡を頂きました。

 『広がる「喫煙者不採用」の動き 導入企業は好評価 「差別」の懸念も…』という記事で、先週中ごろに取材を受けました。

 約15年前から喫煙者を採用していない大阪の一級建築士事務所「アトリエm」の守(もり)谷(たに)昌紀代表(48)は、現場の防火も理由のひとつとした上で、「役に立つための仕事で、人に迷惑をかける可能性があることはしてはならない。顧客に引き渡す商品の場ではなおさら」と話す。

 たったこれだけの部分ですが、それでも15分から20分くらいは記者の方と話をしました。

 このあたりが新聞の凄さだと思いますし、時々彼らの目に留まるのは嬉しいことだと思っています。

 スタッフ不足の真っ最中で、微妙な気持ちもありますが、嘘はつけないので仕方ありません。

 今日から10月で、すでに稲穂も頭を垂れはじめています。

 関西の農家の方は、24号の風害が少なかったことは何よりだったでしょう。

 我が家も停電に備えて、手動発電ライトを試験点灯。

 すべて取り越し苦労に終わりましたが、嬉しい誤算でした。

 とはいえ、屋根、外壁、板金、電気工事などは、未だ追いついていないのが現状です。

 瓦屋根が減小する中での天災で、需要が供給を大きく上回ります。

 私の仕事においても、瓦屋根の作品はこれまでに1軒だけです。

 「境内の中の家」は、2008年にフジテレビのスーパーニュースから、200日に及ぶ密着取材を受けました。

 文字通り、神社の中にある神官のお家で、軒先は一文字瓦ですっきりと仕上げました。

 もしかすると、私たちが瓦最後世代になるかもしれません。

 最近の瓦は、下地に桟をうち、そこに引っ掛けてクギで固定します。

 従来の瓦は土で固定しているだけ。

 最上部にある「のし瓦」は銅線もしくはステンレス線で固定されますが、それでも21号の時は、多くの瓦が吹き飛ばされました。

 こちらの建物は、築50~60年だと思うので、おそらく土での固定です。

 密集して建っている場合、古い工法だったとしても、そこまで被害を受けていないことが多いのです。

 反対に、ポツンと立っている建物は風の影響をダイレクトに受けます。

 こちらの住宅は、屋根上のアンテナがかなりの風圧を受けたでしょう。

 根元の屋根部分がかなりのダメージを受けており、早々に手を入れてあげたいところです。

 周辺環境は変わるので、どうすることもできませんが、街並みを意識するということは、景観以外の恩恵があると言えるのです。

 先程の被害が見えなかった住宅ですが、屋根の上に面白い飾りが載っていました。

 調べてみると「鍾馗様(しょうきさま)」と言うようです。

 道教の神様で、中国では鬼を退治したという逸話から、厄除けに飾るよう。

 向かいの家が「鍾馗様」を飾ると、同じようにお向かいが飾る習慣があるらしく、微笑み返しとして「おたふく」を飾ることもあるそうです。

 よくみると、凛々しく、また可愛らしい顔をしています。

 厄の中には、もちろん台風も入っていたでしょうが、最後は神頼みなのです。

 オリジナリティ、個性が尊重される時代です。

 過去の慣習を踏襲することが全て良い訳ではありませんが、自身の経験外のことが起こることは多々あります。

 そんな時、街並みという歴史に学ぶことは沢山あると思うのです。

 頭を重くした細い稲穂が、一本で植わっていたなら。

 台風がくればひとたまりもないでしょう。

 それぞれが自分で立とうという意識は大切ですが、人にしろ、植物にしろ、よりそって生きなければならない場面は、意外に多いのかもしれません。

 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

 鉄血宰相、ビスマルクの言葉を、警句として聞きたいと思うのです。

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社長なんて盲腸と同じ‐1519‐

 一昨日の朝、会社に向かう途中に「気持ちいいなあ」と思わず声にだしてしまいました。

 今日は生憎の雨ですが、本当に過ごしやすい季節になりました。

 カレンダーをみると彼岸の入り。

 各現場も天災に振り回されてはいますが、何とか前に進んでいます。

 完成までには、多くの職人が現場で働きますが、一番長い時間を過ごすのが監督と大工チームです。

 この日は棟梁とその後輩という2人が、テキパキと仕事を進めていました。

 下地の石膏ボードを張ったあと、開口部をカットしている場面です。

 まずは上のボード。

 そして下の部分も。

 光が差し込んでくると、景色は劇的に変わるのです。

 先端部は刃がなく、根元のみが切れるのようになっている電動ノコギリです。

 監督も、「このやり方が一番きれいにいきます」と言っていました。

 監督は現場の総責任者なので、すべての職人が彼らの指示で動いています。

 この現場での打合せには、2人も監督が参加してくれます。

 手前に立つのは、私と同じ世代でこの現場の監督です。

 奥の監督は私より一回り上で、この現場ともうひとつの現場を担当してくれています。

 総監督のような立場で、実質的には上司にあたるはずですが、この方は役職が一切ありません。

 私と同世代の従兄弟が起こした建築会社に合流し、担当物件に関しては全ての判断権限を持っていますが、役職で言えば平社員なのです。

 「社長とか専務とか、そんな役柄に興味がないんです。役柄があろうがなかろうが、やることはやりますので」と。

 世の中には、「社長」という言葉が大好きな人が沢山いるなかで、かなり稀有な人だと言えそうです。

 そういう私も、そのうちの1人でしょうか。一応役柄で言えば代表取締役ですが、「社長」とは誰にも呼んでほしくありません。

 また、クライアントにも「先生」と呼ぶのだけはご勘弁下さいとお伝えします。

 何と表現すれば良いのか難しいのですが、個々の関係性より、役柄が上回ることは意味がないし、それではより深い関係は築けないと思っているのです。

 ただ、学生君に「守谷君」と言われるのはさすがにムカッとくるので、社内では「所長」で統一して貰っていますが。

 本田宗一郎はこう言いました。

 社長なんて偉くも何ともない。

 課長、部長、包丁、盲腸と同じだ。

 要するに命令系統をはっきりさせる

 記号に過ぎない。

 一丁両断。切れ味最高です。

 盲腸なので、居なくても問題ないのです。

 社長をバカにしている訳ではなく、目的を達する為だけに存在するのだという事を、笑わせながら教えてくれます。

 言葉の感覚も、まさに神様レベルなのです。

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困難克服ゲーム‐1515‐

 台風21号が通り過ぎ、2日が経ちました。

 関西では風速50m/sを越えた所もあり、大きな傷跡を残して行きました。移動が速かったのは不幸中の幸いだったと思います。

 私が設計した建物でも、室外機が飛んでしまった、剥がれた大きな屋根が飛んできてバルコニーに落ちてきたなどの連絡を貰いました。

 こちらは、連絡を貰った訳ではないのですが「Ohana」のシンボルツリー、オリーブが倒れてしまったとfacebookで知りました。

 店主で、カメラマンの石井さんの写真を拝借しています。

 今から9年前、2009年の9月「古川庭樹園」へ行きました。

 畑と言われる、樹木を育てるエリアを、石井さんと探してまわったのです。

 その中から、この一本をみつけました。

 私の車で持って帰り、自分達で植えたのです。

 竣工時はこの大きさ。1.8mくらいでしょうか。

 私が最後に会ったのが今年の6月。BBQの時でした。

 軒下までが6.8mなので、およそ7mにまで成長しました。

 本当に立派になったなあと、思っていたのです。

 形あるものはいつか壊れます。生き物なら、いつか必ず息絶えるのです。

 関西は大変だと言っていたら、北海道で震度7の地震が発生しました。

 自然の驚異を前にしたとき、ただ頭を低くして、行き過ぎるのを待つだけしかできないのです。

 人生は困難克服ゲームです。

 RPG(ロール・プレイング・ゲーム)と例えてもよいかもしれません。

 敵と出くわさなければ、また戦わなければ経験値が上がることはありません。

 ゲームならその戦いを楽しめるが、現実なら逃げたくなるのは何故なのか。

 ゲームは気に入らなければやめることが出来ますし、必ず解決できると知っているからだと思います。

 ならそう決めるまです。

 絶対にやめない、必ず解決すると決める。なかなかできませんが、これが人生を困難克服ゲームにするコツのはずです。

 何が起っても、人は死なない限り生きます。

 それなら、前向きに生きるだけです。

 今日も、明日も困難ばかり。それこそが、成長の源ですから。

■■■9月16日(日) 9:00am~12:00pm 高槻中学・高校文化祭にて
「頼れる卒業生」による無料相談コーナーに参加します■■■
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女房と○○は古いほうが良い‐1507‐

 10年程前から、カメラはCanonのEOS 5D Mark Ⅱというモデルを使っています。

 竣工写真は写真家に撮って貰うのが理想ですが、時間がない時、また私でなければ獲れないタイミングもあったりします。

 主にはその時に使うため購入したものです。

 また、建築用の広角レンズは画角が広いため既存建物の調査にも欠かせません。

 海外へ行く時も、5D Mark Ⅱを持っていくので、私にとっては「本気モード」の際のパートナーです。

 しかし、今年の5月、トレジャーキッズたかどの保育園へ、写真を撮りに行った頃から少し調子が悪く、気になっていました。

 6月初めの、スタッフの結婚式でも全自動モードしかシャッターが切れなくなってしまいました。

 Canonはwebサイトからの修理申込を勧めているので、そこから依頼すると9万円弱の見積りメールが。

 後継機種の 5D Mark IVが26万円くらいなので、買い替えも視野に入れていましたが、苦楽を共にしてきたカメラなのでひとまず修理を依頼しました。

 それから10日。

 ようやく戻ってきたのですが、伝えていた問題が解決していないのです。

 ここからのやりとりは、メールでは時間が掛かりすぎると判断し、肥後橋にあるサービスセンターへ直接持っていきました。

 この周辺、以前はプロラボに現像をだしに来ていたので、それなりに土地勘があります。

 土佐堀川沿いに建つのはTORAYのロゴが入る中之島三井ビルディング。

 あべのハルカスも設計した、シーザー・ペリの設計です。

 フェスティバルホールの外壁は、なじみがあります。

 それらを残して、高層ビル化されたのが2013年。

 保存をベースにすることは良いことだと思いますが、この継ぎはぎを私は好きになれません。

 しかし、今生の別れになる可能性もあると思い、全自動モードで辺りを撮りまくったのです。

 その向かいのビルにCanonのサービスセンターはありました。

 初めは若い女性が応対してくれましたが、中から主任のような人がでてきて、丁寧に謝ってくれました。

 買い替えという選択をした方が良かったかなと相談すると、

 「スポーツ写真等を撮るプロカメラマン様なら別ですが、このクラスのカメラは、修理しながら使って頂いている方の方が多いです。私もそちらをお勧めします」と。

 責任を持って修理しますので、もう少し時間を頂きたいですとのことでした。

 ついでに、普段分かり難いISOことや絞りのことを尋ねると、親切に教えてくれました。

 自社の製品が好きで、プライドを持っていることが伝わってきます。

 そして、無事修理が済み、健康体になって戻ってきました。

 今日はフルリノベーションの現場調査でしたが、広角レンズをつけて、全部屋を撮影してきました。

 蔵の2階の小屋組みを撮ったものですが、やはり長年の相棒、5D Mark Ⅱに限ります。

 女房と鍋釜は古い程良い

 カメラ、建築もあわせて、ひとまず古いほうが良いとしておきます。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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■4月1日「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

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『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記<</a

深夜0時、食卓で事件は起きる‐1504‐ 

 鬼門は中国から伝わってきたものと言われています。

 表鬼門に対して、南西の裏鬼門も、玄関や水回りを避けたほうが良いとされます。

 最も日差しが強い、モンスーンや台風の強風が吹き込み屋根を吹きとばされる、その風によったカマドの火の粉が入ってくる等がその理由です。

 週末の台風12号は、真東から日本列島を横断しました。裏鬼門も再考の余地がありそうです。

 その雨の中、北浜の「五感」本店へ寄ってきました。

 この界隈は「生きた建築ミュージアム」に選ばれている建物がいくつかあります。

 「五感」の入る新井ビルもそのひとつ。

 1922年(大正11年)に銀行として建てられました。

 少し南に下ると高麗橋野村ビルがあります。

 大阪瓦斯ビルで知られる、 安井武雄の設計で、1927年(昭和2年)の完成です。

 柔らかい曲線は、大阪瓦斯ビルでも見られます。

 更に南に下ると「生駒ビルヂング」。

 時計店らしく、大きな時計が目印。1930年(昭和5年)の完成です。

 大大阪時代の建物がずらりと並んでいるのです。

 新井ビルは何度か訪れていますが、店舗に入るのは初めて。

 看板も建物を尊重したもので、好感がもてます。

 店内は1年前に改装したそうで、真新しい感じでした。

 目的は、米と和三盆で作られたこのバームクーヘン。

 今年の6月にスタッフが結婚したのですが、その引き出物の中にありました。

 当日の式が終わり、家に帰って晩酌をしていると家族は10時頃には、2階へ上がって行きました。

 もう少し1人で飲んでいたのですが、キッチンへ行くとこのバームクーヘンが4つに切られて置いてありました。

 1つ食べて寝るか、と思ったところまでは覚えているのですが、その後の記憶がなく……

 翌朝、下に降りると、娘が「お父さん、また私のデザート全部食べたやろ~」と。

 「また」と言うのは、5年くらい前に娘のお気に入りだったハイチュウ(いちご味)を、私が夜に全て食べてしまったという一件を指しています。

 元々、甘党でもない私が、ハイチュウをそんなに食べるはずもないのです。

 ウィスキーを熟成させる過程で、幾分量が減ってしまうことを「天使の分け前」と言うそうですが、甘い物好きの天使が分け前を求めたのかもしれません。

 そんな言い訳をしていると必ずバチがあたります。

 晩酌は、一日おきと決めているので、それなりに節制しているつもりですが、眠い時に甘いものを食べ出すと、たまにストッパーが壊れてしまう時があるのです。

 午前0時を過ぎたあたりからの甘いものは絶対的に要注意。

 週末に誕生日を迎えました。天命を知る50歳まであと2年。夜中にハイチュウを食べている場合ではありません。

 天使が応援してくれるよう、また、悪魔にとりいられないよう、規則正しい生活をおくれる48歳でいたいと思います。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「羽曳野の家」放映

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日本最強の城で、開高の言葉を思う‐1502‐ 

 埼玉県熊谷で41.1℃を上回り、日本最高記録を更新したとありました。

 クーラーがなければ生命の危険さえあるという時代になってしまいました。

 普段の暮らしで我慢する必要はないと思いますが、今回の天災時のように、電気の供給がままならない事もあります。

 夏の光は最小に、冬の光は遮らない。風が流れやすい開口部を切る。建築に関わらせて貰う以上、これらは常に探求していかなければならないと感じます。

 「日本最強の城」というノボリをみつけ、奈良県の高取城址へいってきました。

 山道に入った途端に道が狭くなり「もしや険道か」と一瞬思いましたが、何とか到着。

 高取山(583.9m)の山頂付近にあり、日本最強をうたう山城が高取城です。

 城内は約10,000㎡、周囲約3km。

 広大な城内は、山頂付近の3,000坪にも及びます。

 壺坂口門から、木漏れ日が落ちる山道を500m程登ります。

 山頂付近の3,000坪が全て城。

 急峻な山肌の至るところに石垣が築かれています。

 ただ登るだけで息がきれてきますが、涼し気な景色に救われます。

 山頂付近に近付くと、急に視界が開けてきました。

 やっと天守閣址かと思うと、これは太鼓櫓。

 裏手に回ると東洋のマチュピチュと言われた、別子銅山を思い出します。

 櫓上に登り、振り返るとようやく本丸。

 手前が二の丸で、家臣たちの屋敷があった場所。

 とても見難いのですが、右下に居る人の身長と中央の大木を比べてみて下さい。

 石垣をみて「うわっ」と声を出してしまったのは初めてです。

 正三角形よりきつい角度で、石垣が10m積み上げられていました。

 その景色は圧巻でした。

 左側面から登りますが、標識を持っているのは熊。

 スーパーKなる人を襲う熊が話題になる時代です。ちょっと冗談きついわ、という感じ。

 ちなみに、8m飛ぶ熊撃退スプレーは持っていませんが、2~3m飛ぶ唐辛子スプレーは持ち歩いています。

 非常時にこれで撃退できるかは、普段のイメージトレーニング次第。

 動線を複雑にするため、曲輪が複雑に配置されています。

 14世紀に築城され、明治期までに自然倒壊したそうです。

 現在は木が生い茂っていますが、是非その姿を見たかったもの。

 標高583.9mにある、天守閣跡に到着しました。

 壺坂口門から20分くらい掛かったでしょうか。

 正面の大木裏を恐る恐るのぞいてみると、足がすくむ程の高さです。

 手摺がないこういった景色を、現代人はなかなか体験することができません。

 北には奈良盆地。

 南には吉野の山並みを望みます。

 この上に3層あったという天守閣からの眺めは、いかばかりのものだったのか。

 真っ二つに割れている木が結構ありました。

 落雷によるものでしょうか。

 この山頂部にある広大な本丸で、多くの人が暮らしていたのでしょう。

 井戸跡には、清いとまでは言えませんが、この日照りが続く中、水がにじんでいました。

 難攻不落というか、甲冑を来た武士がたどり着くだけでも大変なこの高取城。

 どうやら先月、NHKの番組で熊本城や大坂城を押さえて「最強の城」と認定されたようです。

 この山奥で、それなりの人とすれ違った理由と、真新しいノボリがあった訳が理解できました。

 石垣の上に古瓦が置かれています。

 足下を見れば石に交じってあちこちに。

 城郭に使われていたものでしょうが、分別解体した訳でもないのに、石垣以外、すべて自然に帰って行くのです。

 改めて、石の強さと、自然素材で作る意味を考えさせられます。

 永遠である必要など全くありません。

 作家・開高健は「河は眠らない」でこんなことを書いていました。要約してみます。

 木が倒れ、朽ち、苔が生え、微生物が繁殖し、バクテリアが増殖し、土を豊かにする、小虫がやってくる。

 小虫を捕まえるためにネズミなんかがやってくる、そのネズミを食べるためにまたワシなんかの鳥もやってくる。

 森にお湿りを与える、乾かない。そのことが河を豊かにする。全てはつながりあっているんだ。

 風倒木のことを、英語でナースログと言う。森の看護をしているという意味で、自然にとって無駄なものはひとつもない。

 無駄に見えるけど貴重なものは沢山ある。人にとってのナースログとは?

 無駄をおそれてはいけないし、無駄を軽蔑してはいけない。何が無駄で何が無駄でないかはわからないんだ。

 人は分からない中でも、何かしらの決断をしながら生きて行かなければなりません。

 悩んだとき、迷った時は、原理原則に戻る、太古に戻ることにしています。

 自然だけが素晴らしいとか、人こそが素晴らしいというつもりはありません

 無駄をおそれてはいけない。軽蔑してはならない。大阪生まれの作家の言葉に、何か救われる気がするのです。

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■3月31日「R Grey」満室となりました
 大阪市平野区平野西5-6-24
「さかたファミリー歯科クリニック」7月26日 OPEN
枚方市津田西町1-24-8

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