カテゴリー別アーカイブ: 02 ことば・本

難解、読書の秋

 昨日、11月7日は立冬。秋は足早に……

 週末は、滋賀県の朽木に行く予定です。山中なら、紅葉がさかりでしょうか。この季節、歯ごたえのある、ありすぎる本を読みたくなるようです。

 昨年の秋は、「タイタンの妖女」カート・ヴォネガット・ジュニアにてこずっていました。

 今年はニーチェの「善悪の彼岸」。

 途中、他の本も平行しましたが、約4ヶ月掛かってしまいました。

 そもそもは、「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―」佐藤優、を読んだのがきっかけです。この本を勧めてくれた人から「彼はこんな本を読んでるみたい」と教えて貰ってのです。

 古典から哲学書まで、どう見ても難解そうなものばかり。たまにはそんな本を読まないといけないなと思い、久し振りにニーチェを読み始めました。

 しかしこれはカート・ヴォネガット・ジュニアの比ではありませんでした。難解につぐ難解。形容につぐ形容。訳者は「ビルマの竪琴」の著者、竹山道雄。彼もあとがきに、難解だと書いていました。

 男子の成熟。―小児のときの遊戯の際に示したあの真剣さを、ふたたび見いだしたこと。

 愛よりなされたことは、全て善悪の彼岸に起る。

 前者は理解できます。しかし後者は……何とかかんとか読み終わりました。

 今度は楽しく読める小説をと「官僚たちの夏」を選びました。

 著者の城山三郎は社会派小説家と呼ばれ、一度読んでみたいと思っていたのです。

 1960年代の通産省を舞台に官僚のトップ、次官となる主人公、風越信吾。彼は、ミスター通産省と呼ばれる名物官僚で、大臣、総理との論戦も辞さないという豪傑タイプ。

 池田勇人、佐藤栄作など実在の総理もモデルとなっている通り、多くの人物が実在したようです。日本が我武者羅に働いていた時代の、官僚の栄光と悲哀を描いた話と言えばよいでしょうか。やはり小説は読みやすい。

 例えばテレビで、評論家が難しい時事問題を簡潔に解説し、一刀両断に結論付ける場面があります。爽快な感もありますが、普段の暮らし、仕事ではなかなかそうならないもの。

 「バカの壁」の著者、脳科学者・養老猛は「常に脳にトゲが刺さっている。そんなちょっと気持ち悪い状態じゃないといけない」と言っていました。何かちょっと気持ち悪いくらいで丁度いいのだと。

 自分の哲学と合わない事を避けていたなあ、と思う時があります。しかし、会話でも答えが予測できないほうが刺激的なもの。苦手、知らない、ところに成長の余地はありそうです。

 次に読むのはまた来年か。秋は難解が良いかも。
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』■■■ 7月8日(日)「匠」として出演しました

メディア掲載情報

一級建築士事務所 アトリエ m
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

秋のセミナーシリーズ 5回戦

 8月の終わり。天王寺に建設中のあべのハルカスが、日本で一番高いビルになりました。

 設計は竹中工務店で、外観はシーザー・ペリがデザインしています。

 シーザー・ペリは高層ビルも得意としているアメリカの建築家で、中之島のある国立国際美術館も彼の作品です。

 竹をモチーフにしたというこの挑戦はなかなか刺激的です。

 天王寺は事務所創業した場所で、私も一家言持っています。

 ハルカスの北側はJR天王寺駅で、東隣は天王寺MIO。間の道がそれほど広くないのです。

 以前建っていた、村野藤吾設計の近鉄百貨店。それらを配慮して高さを抑えていたのかは分かりません。

 しかし300mという高さは、完全にスケールアウトしていると思います。

 建築は街の一部で、街を構成する要素です。

 在る物、これから出来て行くものは、出来るだけ肯定的にとらえたいと思いますが、チンチン電車の走るこの街に、日本一高いビルが要るのかなと思うのです。

 完成すればまた違う印象を持つのか。注目しています。

 話は変わって、今週土曜日はすまいcafeでのミニセミナーです。その後も、人前に出る機会が何度か続きます。

■10月20日(土) 13:30~15:30
LIXIL大阪水まわりショールーム
第47回すまいcafe『幸せな家って?新築orリフォーム』
http://showroom-info.lixil.co.jp/kinki/osaka_wt/
■10月27日(土)、28(日) ASJ建築家展に参加
泉の森ホール 1F・ギャラリー
大阪府泉佐野市市場東1丁目295番地の1
11:00~18:00(入場無料)
■11月3日(祝・土) 11:50am~12:00pm
高槻高校でセミナー
■11月17日(土)
山口県岩国市で建築関係者向けセミナー
■11月18日(日)
ASJ岸和田スタジオでセミナー

 私は始道塾という経営の勉強会に参加しています。

 その塾長である恩田さんに、話をする際に心掛けている事を聞いてみました。恩田さんの講義は、分かり易く、かつ面白い。素晴らしいのです。

1. 自分が思っているより、何倍もゆっくり話す。出来ればその映像を撮ってみてみる。
2. 間をおき、反応を確認。
3. 重要なフレーズは何度でも。
4. 聴いている人が良くなりますように、と思う。
5. 共通の土壌をつくる。

 早口な私は、1.はまず注意しないといけない所です。2.が最も欠けているのかなと思います。自分の立てたタイムスケジュールをこなすような話し方では、何か伝わる事はなさそうです。

 3.は1、2割の人が「しつこい」と思ったとしても、大半に伝わっていないと思えば、何度も繰り返して良い。4.は間違っても、自分が恰好良くなどと思わない事、と。これもよく分ります。何故か、上手く、恰好よくやりたいと思ってしまうのです。

 皆が同じ土壌ではない、結婚式のスピーチは、5.の土壌作りが難しいのだと分りました。

 今月末の建築家展はセミナーではありませんが、私にとっては5回シリーズ。野球のプレーオフではないので、勝ち負けはありませんが、進歩できるのか。

 全て終われば総括したいと思います。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』■■■ 7月8日(日)「匠」として出演しました

メディア掲載情報

一級建築士事務所 アトリエ m
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

小さな説

 私の住む平野区は大阪市の南端。いくらか田んぼも残っています。

 概ね稲刈りも終わり、ハトが落ち穂をついばんでいました。

 日に日に秋は深まって行きます。

 知らぬ間に冬になったと言わないで良いよう、どこかに出かけたいところ。

 しかし昨日は子供のソフトボール、サッカーがありどこにも行けず。DVD、読書とインドアな一日でした。

 この秋に読んだ本については、また書こうと思っているのですが、作家・開口健は「大きい説ではなく、小さな説を書いて飯を食うてます」と言いました。

 同じ出来事を体験したとしても、それをどう切り取るからで「説」は大きく変わります。

 開高健をノンフィクションライターとしてとらえるなら、沢木耕太郎、二宮清純は正統な系譜と言えるかもしれません。二宮清純が自身のwebサイトに再掲載したコラムにその実力が余すところなく発揮されています。

 題材は、1988年ソウル五輪。背泳ぎで鈴木大地が金メダルをとった場面です。

 鈴木大地は、決勝までライバルに大きく水を開けられていました。

 もし、メダリストではなく、金メダルを取りに行くなら、スタートから水中を潜水しながら進む「バサロ」のキックの回数を増やすべきではという結論を、コーチの鈴木陽二が導き出します。

 前半に体力を消耗しすぎると、後半のスピードが伸びない。経験から21回と決めていた水中でのキックを、リスクを覚悟で25回にしないかと鈴木大地に提案します。

 それに対して鈴木大地は「いや27回でいきましょう」と応えました。結果、3人がほぼ同時にゴールした大混戦を制し、鈴木大地は金メダルを獲得しました。

 二宮はこの話の前後から、4つの切り口で語ります。

1. コーチ鈴木陽二が言う「プレッシャーを楽しんでしまえばいい」とは、子供がピクニックを楽しむというようなものではない。世間をあって言わせてやろうと、絶え間なく脳細胞を働かせ、創意工夫を重ねる事だ。

2. 「あとは開き直ってやるだけ」という発言をする選手が、予想以上の成果をだすことはない。これは思考停止という現実逃避で、そのような愚か者に、神様が至福の瞬間をプレゼントすることはない。

3. 「負けはしたが、練習通りできたので満足している」や「教えた通りにやってくれた」と言う選手や指導者にも魅力を感じない。プロセスは大切だが、結果が伴ってこそ評価。なぜ選手をいたわるのかいうと、自分の満足に協力してくれたという考えに他ならない。

4. 「選手たちを褒めてやりたい」「選手たちに感謝している」と涙ながらに話す指導者も同様。こういったセリフは自らが主人公だと勘違いしているからつい口にでてしまう。

 これらの解釈は、冷徹にも見えますが、奥底にある真実だと感じます。また、スポーツをする者、またそれ以外の人へ向けても、成長の糧とするよう促している、大きな愛情も感じます。

 これ程シャープで手厳しい説を見る事はまれです。何らかの説を唱える時、真実を真っ直ぐに見る目と、非難を恐れぬ覚悟が必要なのは間違いありません。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』■■■ 7月8日(日)「匠」として出演しました

メディア掲載情報

一級建築士事務所 アトリエ m
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

イチローNYへ行く

 7月24日(火)の朝、「イチロー、ヤンキースへ」というニュースが飛び込んできました。

 昨年、連続シーズン200本安打は10年で途切れましたが、ことしは4割に近いような数字を残してくれるのではないか、もしくは本当にイチローは衰えたのか。とても興味を持って見ていました。

 打順が3番になったり、1番になったりというニュースは聞こえてくれど、調子は一向に上がらない様子。ついに……という気持ちもありました。

 火曜日はイチローの会見を見ようと、急いで家に帰りました。

 移籍の理由については会見の通りですが、マリーナーズのファンに深々とお辞儀する姿が心に残りました。
 
 彼の出す結果はいつも痛快で、その言葉も刺激的でした。

 過去に全て過去に掲載したものですが、敬意を持ってイチロー語録をピックアップしてみます。

 「モチベーションが落ちたことは無い」
 「目標を設定して到達してしまうと努力しなくなる。満足は求めることのなかにある」
 「第三者の評価を意識した生き方はしたく無い。自分が納得した生き方をしたい」

 子供達に、私達にも夢を与えてくえます。
 「体がでかいことにそんなに意味はない。僕は見てのとおり、大リーグに入ってしまえば一番ちいちゃい部類。日本では、中間クラスでしたけども、大きな体ではない。そんな体でも、大リーグでこういう記録を作ることができた。これだけは、日本の子供だけではなく、アメリカの子供にも言いたい。

 『自分自身の可能性をつぶさないでほしい』――と。

 あまりにも、大きさに対するあこがれや、強さに対するあこがれが大きすぎて、自分の可能性をつぶしてしまっている人がたくさんいる。そうではなくて、自分自身の持っている能力を生かすこと、それが可能性を広げることにもつながる」

 2004年の年間262安打は世界記録と言って良いでしょう。この記録こそ、イチローが世界一のヒット職人であることを示しています。
 
 彼は、ある番組でこう言っていました。

 「唯一、数字で目標をあげるとすれば、安打数、200本ということになるでしょうか。

 もし打率を目標にすると、この打席は立ちたくない、向かいたくないと言う場面が必ず来ると思います。

 しかし、安打数を目標にすれば、そんな気持ちにはならない。打席に向かいたくなる。いつも楽しく野球が出来る」

 彼のヒットのうち、1/4近くが内野安打。一般的に内野安打とは、打ち取られ、詰まった打球になり、一所懸命走った結果それが安打になったという感じです。

 しかしイチローは、詰まらせてヒットにする技術があると言いました。事実、難しい球はそうやってヒットにしているのです。

 ボールを捉える技術、一塁まで掛け抜けるスピード、共にメジャートップレベル。その彼が、誰もがその感覚を嫌う、詰まった当たりの内野安打までも、積極的に狙っていったなら……

 一本でも多く安打を打つのが目的なら、イチローにとっては当たり前の事なのかもしれません。しかし彼は、世界で初めて、本気で内野安打をも狙った一流打者なのでは、と感じたのです。

 MLBの100年を超える歴史の中で、誰よりも目的に純粋で、楽しく野球をしようと努力したのがイチローだったのでは、と思うのです。

 2009年の春にあった第2回ワールド・ベースボール・クラッシクでは、絶不調に陥ります。それでも最後にはサヨナラ安打で結果を出しました。何故これらの事が達成できたかという記者の問いに

 「重圧には弱いほうだと思います」

 「野球が好きだった事と、常に今がベストだと言える状況で、臨んでいる事が僕の強みでしょうか」

 と答えました。言い訳は絶対にしないという宣言です。大切なのは常に準備。彼こそ真の侍です。最後に、その環境についても再度掲載しておきます。 

 イチローを含めた一流のアスリートが育った環境、親の考え方を書いた本『天才は親が作る』吉井妙子著の内容を要約したものです。

 イチローの父は、小学3年から6年までは毎日一緒に練習し、高校卒業まで欠かさず練習を見に行きっていました。

 中学生の時、イチローは監督からバッティングフォームを矯正する指導を受けます。

 二人でフォームを創り上げてきた父は「バッティングフォームだけは変えないように指導していただけませんか」と監督に願い出ます。

 プロに行ってからも、同じ場面はやってきますが、今度は自らそれを拒否します。その結果2軍に落とされたりもしました。聞き入れていれば現在のイチローは居なかったかもしれません。

 父からはリーダーとしての覚悟、子、イチローからは信念を貫くことの重要性を教えられます。素晴らしきかな鈴木家と一郎。

 彼はその華々しいキャリアをヤンキースで締めくくるつもりでしょうか。どうしても観に行きたくなってきました。
 

 以下はその他語録。

 僕は「寝ずに考えたんだけど」は信用しないんです。だって、そうでしょう。夜に書いたラブレターなんて翌朝見れないじゃないですか。大事な決断こそ、いつも以上に寝て、お天道様の下で!ですよ。

 彼は以前、俳優としてドラマにも出演しました。その理由はこうです。

 野球でも自分がイメージ出来れば、ほぼその通りのパフォーマンスが出来る。演技もイメージさえ出来れば、何とかなると思っていました。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』■■■ 7月8日(日)「匠」として出演しました

メディア掲載情報

一級建築士事務所 アトリエ m
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

サバイバル考

 昨日は大暑。暦の上では年で最も暑い日。

 夕方から南港へ行っていたのですが、海風も熱風のようでした。

 停泊するサンフラワーを見ながら、昨年行った九州への旅を思い出したり。

 南港ATCで開かれている「モンスター研究所」というイベントに行ってきました。

 子供が割引券を貰ってき、親子2人で2000円。リアル体験アトラクションワールドとあります。
 

 映画のセットを作るプロが制作した、モンスター研究所なる施設があります。

 そこに我々ゲストが招待され、トラブルが発生するという設定。スタッフは実際の役者だそうです。

 「危険があるかもしれない」などの説明を聞く長男の顔は真剣そのもの。

 写真撮影不可なので、アトラクションの説明は控えます。お勧めできるかというと、微妙なラインですが、子供は相当に焦り、ビビっていました。

 ぎゅっと引っ付いてくるので、心臓が飛び出さんばかりにドキドキしているのが分かります。

 初めてUSJに連れて行った時、スパイダーマンのアトラクションで、子供が気絶しはしないかと心配したことを思い出しました。以前、取材で会ったコピーライターが「我が家の趣味は、お出掛け」と書いていました。私もそうなのだと思います。
 
 では、何故お出掛けしたいか。自分が何かを見たい、もう1つは、子供に何かを見せたいのだと思うのです。

 ビートたけしの弟子、浅草キッドの水道橋博士が以前こんな事を書いていました。
 
 親バカとして、子供の教育に熱心になる心積もりは当然ある。

 しかし、学歴社会の体制内の仕組みのなかで、安全で保障のある道を選択させたいわけではない。むしろ、そこから落ちこぼれてもサバイバル出来る、知恵を授けたいからこそ、教育なのではないか。

 ここにあるのは、俺が思う「教育」とは正反対ではないか。などと思う。

 これは「お受験」について書かれたコメントですが、全くもって共感できます。しかし「サバイバル出来る知恵」はどうすれば授けられるのか。

 何らかの非常事態に陥った時、過去の経験のどこかから「自分で」それらを引っ張って来れた時に、はじめて育つものではないか。もしそうだとすれば、どうやってその体験をさせられるのか。

 いつもトラブルを求めている訳ではありませんが、基本的には出掛けるしかないと思います。親の限界を超えるような体験が理想ですが、それではいくつ命があっても足りません。

 また、大人にとっては他愛もない事でも、子供にとってはそうでない事も沢山あります。
 
 「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」

 後は助けないことでしょうか。これらは、事務所のスタッフに対しても全く同じ。

 嫌われる覚悟は出来ているつもりですが、これが一番難しいのだと思います。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』■■■ 7月8日(日)「匠」として出演しました

メディア掲載情報

一級建築士事務所 アトリエ m
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

稲盛和夫と夏の夜の夢

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』■■■ 7月8日(日) に「匠」として出演します

 今週の土曜日は七夕。娘が笹を持って帰っていました。

 短冊には「じんくんとこうえんにいきたい」。

 じんくん、とは3歳上の兄。私が見ても、何と仲の良い兄妹なんだと思います。

 お隣の同級生が引っ越してしまった事もあり、より2人で遊ぶ機会が増えるのか……私達の頃は子供で溢れていたので、やや寂しい感もありますが。

 先週木曜日の夜。「カンブリア宮殿」に稲盛和夫さんが出演していました。

 司会は作家・村上龍。覚えているのは「限りなく透明に近いブルー」「コインロッカー・ベイビーズ」です。「69 sixty nine」はリアルタイムでした。日曜の夜に放送されていた「Ryu’s Bar」は大人の会話ってかっこいいなと、良く観ていたのです。

 彼は「私は稲盛さんのファンなので、JALの仕事は受けて欲しくなかった」と言っていました。では何故、稲盛さんは火中の栗を拾うことになったのか。

 2010年1月19日、日本航空(JAL)は2兆3億円の負債を抱えて経営破綻します。金融機関以外では戦後最大の負債。

 それを受けて、政府と企業再生機構が白羽の矢を立てたのが稲盛和夫さんでした。

 JALは1987年に完全民営化されたとは言え、親方日の丸の気質が抜けていませんでした。倒産したという意識が希薄で、傲慢なJALの幹部に、おしぼりを投げつけたこともあったと稲盛さんは笑っていました。

 稲盛さんは1959年、28人で京都セラミック(現:京セラ)を創業。町工場から、一代で1兆円企業に育てあげます。

 また、通信事業への民間参入が認められた際は、健全な競争を作るため、大手企業がしり込みする中、第二電電(現:KDDI)を創業します。1984年のことです。

 その際も、今回のJAL再建でも、持ち込んだのは、部門別独立採算性(アメーバ経営)という経営管理システムと、京セラフィロソフィだけ。システムと考え方で、企業を成長させていく。それが、稲盛さんが名経営者と言われるゆえんなのです。

 JALはこの秋、再上場といわれるまで、業績は回復しました。

 私は稲盛和夫さんが若手に経営を教える、盛和塾に入っています。年に数回、稲盛さんから講和を聞く機会があるのですが、この2年はJAL再生の話題も良くでていました。

 「私が目の前で日本航空の再建をやっているのです。そのような価値のあるものを皆さんへ開陳しているわけです。それなのに自分の企業の業績を低迷したままにしておくとはどういうことかと。キツいことを言うようですがが、帰ったら根性を入れて経営をして頂きたい」

 稲盛さんは今年で80歳。君たち若いのに何をやってるんだと、激を飛ばしたのです。

 番組内でも「人生でも、仕事でも、心のありようが一番大切」と言っていました。私が聞いた時には、この言葉には続きがありました。 

 「立派な考えの人は、立派な成果を残すし、いい加減な人は、いい加減な結果しかでていない。私が見る限り、30年という期間で見れば全てこの通りです」

 夏の夜の夢は、30年後に必ず叶う。長女の夢は、今週叶うはずです。

コンチキ号漂流記

 2週間前、和歌浦の地名の由来を書きました。

 紀伊半島には、ポリネシア語に由来する地名が多くあると教えて貰ったのです。

 更にポリネシアとインカ文明の繋がりの話し、「コンチキ号漂流記」のことにも触れました。

 早速子供にと、この本を頼んだのですが、古本しか見つけられなかったようです。

 小学校高学年用とあり、長男が読むのは少し先になりそうです。

 それならと、私が読んでみました。初版は1976年、1997年12月の34刷となっていました。

 これは1947年、戦後すぐの話し。ノルウェーの学者ハイエルダールが唱えた学説はこうです。

 ポリネシアの住民は東南アジアから移住してきたという学説は、潮流、風向きからすると航海が難しい。反対に、南アメリカからは順風、順流となり航海しやすい。

 ただし8000km弱あるこの大海原をどうやって渡ったのか。当時有ったとされる、バルサの筏でたどり着けることを証明出来れば、と考えたのです。
 
 インカ文明とポリネシア文明には似ている点が多くあります。サツマイモの呼び方が似ていたり、巨大建築物と巨大石造のモチーフが似ていたり。

 また、ポリネシアにある言い伝えでは「初めにこの島に住んでいたのは赤毛の白人で、分らない言葉を話していた。彼らを島に連れて来たのは太陽の子=チキだった」というものあります。

 更に、インカ帝国の伝説には「赤毛の白人の王は戦いに破れ、太平洋を西に去って行った。この王の名は太陽王ビラチャコと呼ばれた」というものがあります。ビラチャコの元の名がコンチキ(太陽チキ)だったというい事が分ったのです。

 これがハイエルダールを冒険に向かわせる、最終の動機になったのです。
 
 彼は5人の仲間とともに、太陽王の名をとった筏でペルーを出発しました。102日掛かってポリネシアの島にたどり着き、その可能性を証明したのです。その過程は刺激的で、楽しく活き活きとした彼の筆で描かれています。

 しかし現在の学説では、DNA鑑定の結果、やはり東南アジアが起源とされているようです。DNA鑑定などなければ良いのにと思うのは私だけでしょうか。

 本当に面白いノンフィクション作品だったな、などと思いながら眺めていると、カバーが少しはがれており、中身が見えました。

 この水玉デザインは!

 間違いなく、私の家の本棚にあったものです。

 それが何故、カバーが無くなっていたのかは分かりませんが全く同じ本だったのです。

 同じ本は読まない主義です。

 30年以上開いているとはいえ、名作は再読に耐えうる事を実感したのです。

 特筆すべきはこのデザイン。登場人物のジンベイザメをモチーフにしたものでしょうか。

 決して美しいとは言えませんが、読んでも気付かなかったのが、見た瞬間に記憶が蘇ってきました。

 水玉は一瞬で30年を超えたのです。

コミュニケーション能力

 平野区の中央部には平野郷と呼ばれるエリアがあります。

 平野郷は貿易で栄えた堺と同じく、戦国時代から商人が環濠を築き、自らの手で街を守ってきました。これらを環濠都市と呼びます。

 戦火を逃れた商家も多く、さらに行政も「HOPEゾーン」という、街並み保存の取組みをしているのです。

 趣旨を理解し、条件を満たせば、改修、新築に対して一定額の補助が出るのです。

 朝この辺りを走っているのですが、開店時には来た事がない亀乃饅頭は創業380年。

 看板は流石に風格があります。長く続くという自体が、信用に値すると言えます。

 個人に置き換えても、日本の社会は経験がものを言う、年功序列型社会でした。しかし、近年のIT革命もあり、高度情報化社会はやはり実力主義へ移行しつつあるのでしょうか。

 これらの功罪は常に論じられてきましたが、荒っぽくまとめると以下のようなものです。

 キャリア重視と言えば、能力ある若者の意欲が下がる。実力主義に徹すれば、とび抜けた成果はないが、確実な結果をコツコツ残す人が日の目を見ない。

 私は実力主義という言葉に違和感を持っていました。その違和感が何なのか、はっきりしなかったのですが、あえて言うなら努力主義が良いと考えていました。たゆまぬ努力を続けて人こそが評価される社会です。

 現実はそんなロマンティックなものでないと聞こえてきそうですが、それらも踏まえてもすっと腹に落ちる、そんな文章を読みました。

 以下は、経営コンサルタント、石原明氏のメルマガにあった質疑応答の概要です。

 Q. 経営者が考えるコミュニケーション能力とは?

 A. 相手の気持ちを察知できるということだが、能力というよりは姿勢。そういった性質が性格の中に備わっているかどうか。

 能力が「そういった性質が性格の中に備わっているかどうか」となれば、ニュアンスは幾分変わってきます。スパンの長い話になってくるのです。
 ここではコミュニケーション能力一点について論じられていますが、もっと広い意味に置き換えれる真理だとも思います。

 今一番良い選択ではなく、永続的に自分がベストと思えるかどうか。時間軸に重きを置く事で、良い答えが出るケースは多くあると思うのです。

 能力重視、実力主義などと言いますが、飛び抜けている人など、ほんの一握り。よって普段通常使われるべき言葉としては、姿勢、努力のほうがよっぽど良いと思うのです。

地頭

 昨年の後半は「タイタンの妖女」カート・ヴォネガット・ジュニアに手こずっていました。

 非常にシニカルでコミカル。読みごたえもあり面白かったのですが、何故かペースが上がらず。何か月も掛かってしまいました。

 一番最近読み終えたのは「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―」。

1

 ある方に勧められたのですが、あっと言う間でした。

 小泉内閣成立の際、外務大臣に就任したのが田中真紀子。「外務省は伏魔殿」の言葉に象徴される、外務省との確執劇がありました。丁度そんな時期の話です。

 外交官、佐藤優は対ロシアの専門家。特殊情報(インテリジェンス)を担当するのですが、これはいわゆる諜報活動です。

 同じくロシアに強いパイプを持つ鈴木宗男議員のブレーンとして関係を強めて行きます。

 2000年までに北方領土問題を解決し、ロシアと平和条約の締結を目指すという、共通の目標もありました。外務省内にもそんな空気があったとありました。

 しかし、政争、省内の権力抗争に巻き込まれ、筆者の言う「国策捜査」で偽計業務妨害、背任の容疑で逮捕されるのです。

 いわゆる「鈴木宗男事件」、国後島における「ディーゼル発電所」の件が主な容疑です。

 その後500日を超える拘留生活の中、検察との対決。検察官との取り調べの攻防。そして何故か育まれていく検察官との信頼関係。

 真相は分かりませんが、処女作であるにも関わらず、緊迫感が伝わってき、説得力もありました。拘留生活を楽しんでいる感さえありました。

 なかなか見えにくい裁判というもの。外交官という仕事。更に諜報活動のこと。初めて聞く事も多く刺激的でした。

 鈴木宗男が代議士を指して「地頭が良い」という表現が使われています。佐藤氏の造語のようですが、雰囲気はよく分かります。

 知っている、理解できるではなく、伝える事ができる、説得力がある、というのが私の「地頭が良い」像でしょうか。高学歴ではないが、このような人は実際にいます。

 インテリジェンスの世界では「秘密情報の98%は公開情報の中にある」という下りがありました。はっきりとは書いていないが、ヒントはちりばめられているという事です。

 しっかり新聞を読みこんでいれば、それらが見えてくる。行間を読むのが、諜報活動というのは映画と違うものの、非常に面白い話です。

 続けて「自壊する帝国」も読み始めたのですが、今頃になって、著者がかなりメディアに露出していることが分かってきました。

 新聞は読みますが、テレビのニュースや情報番組は見ないので全く分かっていなかったのです。その分新鮮ではありましたが。

リーダー考

 昨日、敷地調査に行っていました。

 附近を歩いて回っていると、ありました。

 知らない人の店をB級建築と言えば怒られますが、そんな言葉以外思いつきません。

 色合い、フォルムともとても良い感じです。

 その後通った大阪駅には菜の花が。

 気がつけば3月も最終週です。

 先週、作家・玉木正之氏のwebサイトを紹介しました。

 開口健、沢木耕太郎が好きだったからか、ノンフィクションを書いている作家が気になります。スポーツが題材になっていると、なお分かり良いのです。

 二宮清純はそんな作家のひとり。自身の主宰するサイトには、間違いなくお金をとれる文章が掲載、更新されています。

 以前、リーダーの条件を書いたコラムがありました。
 
 チームを3度日本一に導いた、元サントリーラグビー部監督、土田雅人へのインタビューで質問は「リーダーの条件とは?」です。

 解決力だと思う。失敗してもいい。その場で判断し、早めに手を打つ。後手に回っちゃダメ。

スピード感が大切。失敗したら、また次の手を考えればいい。懸案を放棄せず、ひとつひとつ解決していく。

 その道筋をきちんと示してあげれば選手達はついてくる。何もやらずに、ただ時間だけが過ぎる。そして手遅れになる。これが一番良くない。

 この半年、アトリエmを4人体制に戻そうと、随時面接を行ってきました。更に夏までには5人体制にしたいと思っています。しかしなかなか簡単ではありません。

 マジックのように、全ての問題を目の前で解決出来る訳ではありません。しかし、小さな組織のリーダーとして、立ち止まる時間は一切なくしているつもりです。

 何の手も打たず、行動を起こさないことがどんな結果を導くか……勿論過去に経験済みです。それで、元サントリーラグビー部監督の言葉に反応してしまうのです。

 仕事は分かち合ってこそです。また、本当に求められるものなら、受け継がれていくはずだと思っているのです。