最近は本を読むペースもすっかり遅くなっていますが、この本は久しぶりに先を急ぎました。
イサム・ノグチの作品は大好きで、和紙と竹ひごで作られた照明”あかり”シリーズは仕事でも良く使います。晩年を過ごした香川県牟礼の庭園美術館も大好きな場所です。
それなりに知っているつもりでしたが、彼の人生はより複雑で激しいものでした。
明治の終わり、詩人・野口米次郎はアメリカでレオニー・ギルモアと出会います。彼は日本に戻るとレオニーを呼び寄せるのです。
そしてレオニーは日本で英語教師を始めました。
しかし彼女は数年後、一人故郷に帰ってしまいます。お腹に子供がいる事を米次郎には告げずに。1904年ロサンゼルスでイサムは生を受けます。そうして2つの血に翻弄される人生は始まるのです。
その後、父に来日を拒まれ、中学生から母と離れて暮らし、両親の国が戦争を始め・・・・・・どこにも帰属できない理不尽さにさいなまれながら、イサムは創作の道を歩んで行きます。
石ノミを入れるとき、普通の人は飛び散る破片をおそれ、本能的に顔をそむける。
イサムはそれとは反対に、石にさらに顔を近づけ、目をこらした。
飛び散る破片がガラス片のように目に刺さり、高松市の眼科にかけこんでも、イサムは、ノミと人間が一体となって石に挑む瞬間に目をこらすことをやめなかった。
「石」を愛し、すべてを賭けて「石」を追いかける男・・・・・・-抜粋-
世界を住処にし、地球に彫刻を残した偉大な芸術家、イサム・ノグチ。
遺作とも言える札幌市にある”モエレ沼公園”に行ってみたくなりました。