建築家にとって一番大切なもの‐1355‐

 今月の初め、建築家・高松伸さんとお会いする機会がありました。

 あるホテルで、フレンチをご一緒させて頂いたのです。

 高松伸さんは京都大学の名誉教授で、私達の年代から見れば、レジェンドと言ってよい存在です。

 2年前、母校での文化祭に呼んでもらいました。

「卒業生によるプロフェッショナル相談会」というイベントに参加するためです。

 そこに参加していた大先輩から「高松先生と食事をするけど、ご一緒してみる?」と声をかけて貰ったのです。

 先日行った沖縄の浦添市にある「国立劇場おきなわ」。

 2003年の作品です。

 何と言っても目を引くのが反りかえった外観です。

 竹を編んだような外皮はプレキャストコンクリート製で、軒下空間をつくっています。

 これは沖縄の民家をコンセプトに取り入れたものでした。

 2007年完成のナンバ・ヒップス。

 これは知っている、という人も多いのでは。

 現在は無くなりましたが、道頓堀と心斎橋筋商店街の交点にあった、キリンプラザ大阪も1987年の作品です。

 2015年のシルバーウィークは長崎、佐賀をまわりました。

 長崎港ターミナルは、1995年の作品。

 グラバー邸から見下ろした景色ですが、出島エリアでも存在感を放っています。

 島根県伯耆町にある、植田正治写真美術館も1995年の作品。

 2013年の夏季休暇旅行で訪れました。

 逆さ富士ならぬ、逆さ大山が水面に映ります。

 京都駅から歩いて行ける東本願寺。

 その参拝接待所は地下に埋められています。

 こちらも高松伸さんの設計で1998年の作品。

 スケール感、造形の自由さ。間違いなく日本の建築界を牽引してきたトップランナーです。

 子供みたいな質問をして、場をしらけさせないようにと思っていましたが、どうしても聞きたいことを質問してみました。

 「ご自身が一番納得しているのはどの作品ですか」

 「それは、今設計している作品ですね。未来の作品がそうだと思っています」

 即答でした。

 台湾でも、ビッグプロジェクトが完成、また進行中とのこと。

 そのヒストリーを聞くと、仕事の成功とは本当に青天井だと感じます。

 高松伸さんは食事会のあと京都に帰られましたが、会でご一緒した方と朝方まで飲んでいました。

 何をして成功と言うのかは、人によって違うかもしれません。

 しかし、誰がみても成功という成功は間違いなく成功です。

 カリスマやレジェンドという言葉を軽々しく使うつもりはありまあせんが、そういった人達のみに許される呼称なのでしょう。

 それらを分ける分岐点は、やはり日々の行いのような気がします。

 「仕事とは整理整頓に尽きると所員には教えていますよ」と仰っていました。

 もうひとつの質問です。

 「建築家にとって、一番大切なものは何ですか」

 「クライアントですね」

 クライアントの希望をかなえてこそ建築家だものね、と。

 成功、成長と感謝は同じカテゴリーにない言葉だと思っていましたが、どうもそうではないようです。

 トップランナーが発する言葉の中で「感謝」は最も頻度の高い言葉だと思います。

 最高にモチベーションが上がった夜だったのです。

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